風邪を引きにくい体づくりの鍵は「口腔ケア」!
SUMMARY
- ・冬になるとだれもが免疫機能が低下傾向に…
- ・口の中の状態によっては、腸内環境まで悪化する!?
- ・口腔内を清潔に保って、口腔内の乾燥を防ぐ。
- ・まとめ
日に日に冬の足音が近づいています。冬になると気温の低下や乾燥した空気によって、体調を崩しやすくなる人も多いのではないでしょうか?
そこで、予防ケアの鍵になるのが、免疫システム。
免疫機能を強化する方法はいくつかありますが、今年の冬注目したいのは、口腔内。
実は口の中の状態と免疫システムとは密接な関係があるのです。具体的にどのようなしくみなのか、日精歯科鳩ヶ谷診療所院長の渡辺聡先生にお話を伺いました。
冬になるとだれもが免疫機能が低下傾向に…
「免疫とは、感染や病気、望まない侵入生物を避けるために必要な自己防衛システム。免疫機能が低下すると風邪を引きやすくなるだけでなく、口内炎がよくできたり、肌があれたり、疲れやすくなるなどの症状が現れます」と渡辺先生。
免疫機能は個人によって異なりますが、同じ人でも高まったり低下したりするといいます。特に下がりやすいのが冬。
「体温の上下も免疫に関係していて、低い人は免疫機能が低下傾向にあるといわれています。寒い冬はどうしても体温が下がりがちなので、その分免疫能力も弱くなってしまうのです」
そのほか栄養状態、ストレスの有無、睡眠の状態によっても私たちの免疫機能は日々変化しています。
さらに「歯がきちんとみがけているかどうかによっても免疫システムに影響してくるんですよ」と渡辺先生。皆さんはご存じでしたか?
口の中の状態によっては、腸内環境まで悪化する!?
「口の中にはさまざまな細菌が存在しています。デンタルプラーク(バイオフィルム、歯垢)や舌の表面についた舌苔などの細菌が口のなかの免疫の働きを阻害するのです。また歯周病がある人も要注意。歯周病菌がもつタンパク質分解酵素がウイルスの侵入を手助けしてしまいます」。
風邪だけでなく、インフルエンザなどのウイルスは、目、鼻、口などの粘膜から侵入するといわれています。つまり口腔内の状態が悪いと感染のリスクも上がってしまうということ!
そして、歯周病にかかっている人は意外と多いという事実も。「大人で8割以上の方は歯周病にかかっていると疑って間違いないでしょう。子供なら大丈夫、ということでもなく、15歳以上で5割はかかっているといわれています」
さらに腸への影響も否めません。「口腔内の状態が悪いと、病的な口腔内細菌を毎日飲み込んでしまうので、腸内細菌のバランスにも悪影響が。ご存じのとおり、腸内細菌は免疫力に大きな影響を与えています。腸内に悪玉菌が多い状態が続くことで、さまざまな疾患の発症リスクが高まる可能性もあるのです」と渡辺先生。
口腔内を清潔に保って、口腔内の乾燥を防ぐ。
口腔内の環境が免疫力に関わっていることがわかりました。ではどのように対策を練ればよいのでしょう?
「まずは、きちんと正しい歯みがきをすること。ですがこれがいちばん難しくて、完璧な歯みがきをできている人はほとんどいません。定期的に歯科でのクリーニングと歯みがき指導を受けることをおすすめします」
口腔内の状態は毎日の歯みがきの仕方だけでなく、歯並びによっても変わってきます。通う頻度も毎週なのか、半年に1回でいいなど、人によって異なるそう。
そして気をつけたいのは口の中の乾燥、と渡辺先生。その理由は唾液にあります。「唾液にはさまざまな抗菌因子がたくさん含まれていて、体の中に入ろうとする細菌類をシャットアウトする働きがあるんです。のどなどでのウイルス侵入の最前線で防御し、免疫力を高めてくれます」
ところが最近はドライマウスの人が増え、唾液の分泌が減っている人が多いそう。
「過剰なマスク着用の生活で、苦しくなり気づいたら口呼吸になっている…というのが原因のひとつです。また、口を開けたままの状態でも口腔内が乾燥してしまい、唾液の分泌が少なくなってしまいます」
できるだけ口唇(くちびる)を閉じて鼻呼吸を意識して、日中は口腔内が乾燥しないように水分をしっかりとることがポイントに。また就寝中に口が開いてしまう人は専用のテープなどで対策するとよいでしょう。
「唾液のサポートにはビタミンCが役立ちます。ビタミンCをきちんと摂取することは体内の健康維持につながります」
効率よくビタミンCを摂取し続けることが、鍵となりそうです。
まとめ
口腔内を清潔に保つこと、口の中を乾燥させないこと、そしてしっかりビタミンCをチャージすることが、重要になります。本格的な冬を迎える前に、しっかりケアをしていきましょう。
最後に渡辺先生からアドバイスをいただきました。
「口腔内の細菌は就寝中に極端に増えることがわかっています。朝起きたらまずはうがいか歯みがきをして口腔内の菌を出してください。ひょっとしたら起床後すぐに水を飲む、という習慣の方がいらっしゃるかもしれませんが、前述のとおり悪玉菌を腸に送り込むようなものです。ぜひ、1杯の水の前にうがいを」
Dr.わったー 渡辺聡先生
日精歯科鳩ケ谷診療所院長。むし歯だけの治療、歯周病だけの治療といった局所的・対症療法的な治療ではなく、口の中から総合的に診断。患者一人ひとりに合わせた治療方法に定評がある。